悪童日記:戦時下の混乱を生きる双子の物語

公開年度:

2013年

監督:

ヤーノシュ・サース

解説/あらすじ:

アゴタ・クリストフという作家の小説が基となった作品。
第二次世界大戦下のハンガリーで、双子が懸命に生きる姿を
ノートに記した文体で綴られているのが特徴。
小説には続編が存在し、三部構成。

戦時下の混乱の中、
母方の祖母の家に引き取られた双子。
世間から嫌われ「魔女」と呼ばれていた祖母は
子供相手だろうが、容赦なし。

家にも入れてもらえず、
「メス犬の子供、働きな」と蔑まれた。
母親との約束で勉強を継続し、
父親に貰ったノートに真実を書き記す。

レビュー:

個人的には小説に興味があったが、映像の方が直感的で分かりやすいのでは、との思いから視聴に至る。作品は一言でいえば、ストイック。

食べ物がない、生きる為には労働を強いられる。
盗みやゆすりも行う。
双子は、自分たちの感情を押し殺し、ただ強くならねば、と肉体的、精神的に互いを鍛錬する。
母親の事を思い出すと胸が痛んだ。
忘れようと努め、日記に記し、手紙や写真を全て燃やした。
時代に押し潰されてしまう、圧迫感の中、懸命に生きる姿はどこか頼もしい。

また、作品内の至る所に伏線が張られているようにも見えた。
他国の将校がいわゆる性倒錯者であったり、
隣の家の女の子が兎口であったり、
観ていて、あれっと思う人物が登場している。

近所の収容所で見た光景も日記に書き留めた。
ユダヤ人収容所と思われる、その様子はとても残忍な形で子どもの絵で描かれていた。

戦争中は、人間同士が殺しあう。
双子は残酷さに慣れるために、いろんな生物を殺した。
収容所で見た光景と重ねたのだと思う、虫の死骸にナンバーを振り、日記に残した。双子の異様な一面を描いている部分である。

ある日、双子の母親が現れ、息子たちを迎えに来る。
母親の手の中には、他の男との間に出来た小さな命があった。
その事を不審に思ったのか、一番つらい時に一緒にいてくれなかった母親より祖母を選んだのか、定かではない。
双子は一緒に付いて行こうとしない。
過酷な環境での日々の暮らしが、母親無しでもやっていける強さを育てたのは言うまでもない。

祖父を毒で殺したという、祖母の真実の断片にふれる。
祖母は急な発作で倒れることが、しばしばあったが、
そのことについて、双子の孫たちに、大切な話があると持ちかけた。
次の発作が起きたら、牛乳に入れるようにと、瓶を渡される。毒である。
「これが出来なきゃ、お前たちは恩知らずだ」と言われて、双子は渋々承諾する。

いつもと様子が違う。
いよいよその時が来たのだと双子は思う。
脳卒中で倒れた祖母を、砲撃に会い亡くなった母親の横に埋めた。

やがて、戦争は終わるが平和は訪れない。
一番大事な訓練が残っていると、双子は日記に記す。
最後の訓練とは「別れ」である。

捕虜となっていた父親が戻ってきた。
国境を超えないと捕まってしまうという父親に、なんで出ていくのかと問う。一緒にいようと。
国境の鉄条網一帯は地雷だらけでとても危険なのだ。
監視の目を盗んで通るのは困難。

しかし翌日、双子たちは父親を国境へと案内する。
馬に乗った監視達が通り過ぎるのをやり過ごし、鉄条網を渡る梯子を父親に渡す。
梯子で渡った後が地雷エリアで慎重に進む父親。
横に一歩また一歩、そして前進した時、大きな爆発音とともに、双子の目の前で父親は吹き飛んだ。
日記をどちらが持っていくのか、やり取りした後で、まるで申し合わせたかのように、双子の片方が鉄条網の方へと向かい、
地雷により吹き飛ばされた実の父親の亡骸を踏み台にして、向こう側へと渡る。地雷エリアを渡るには犠牲が必要だったのだ。

いつも一緒だったふたりは、こうして国境で別れた。

[youtube=https://youtu.be/GG2Ay13J9TQ]

悪童日記 [DVD]
Posted with Amakuri at 2017.6.15
ヤーノシュ・サース, アゴタ・クリストフ, アンドラーシュ・セーケル
アルバトロス