黒人社会の闇 ~NAS/タイム・イズ・イルマティック~

タイトル:

NAS/タイム・イズ・イルマティック

公開年度:

2014年

監督:

One9

解説/あらすじ:

歴史に残る名盤と称されるNASの「Illmatic」。
アメリカの黒人が抱える闇を勇敢にも世間に伝えたと言われている。
アルバムが生まれた当時の様子を追った作品である。

NAS2

レビュー:

1980年代、アメリカではシングルマザーが増え、90年代では祖母が母親代わりとなった。
復員兵援護法(兵役後に失業給付金の給付と住宅・教育資金の貸付されるというもの)は
国民に教育の機会を与え、郊外に家を持てるよう金銭的に援助した。
しかし黒人は住居に関して、殆ど恩恵を受けず、白人だけの中産階級が生まれた。
その代わり、政府は公営団地を作り黒人たちを詰め込んだ。

団地は元々、全ての労働者階級を対象に作られていたが、人種意識の強いアメリカでは
黒人が南部から移動し団地に押し寄せてくると、白人は逃げ出してしまった。
そして白人がいなくなった都市部には金や富が流れ込まなくなった。

NAS(ナージア・ジョーンズ)はニューヨーク州クイーンズブリッジの団地で育った。
弟がひとりいて、父は本が好きでミュージシャン、全米を周り公演していた。
母は料理上手で、明るく汚い言葉を使わない。
常に前向きで愛情を注ぎ大切に息子たちを育てている。
家にはトランペットやマラカスがあり、NASはトランペットの才能があったそうだ。
毎日のように吹いていて、唇が変形するから7歳まで待つように注意された。
7歳になる頃には興味がラップへと移っており、毎朝のように覚えたラップを目覚まし代わりに弟に聞かせていた。
当時はTR-808(リズムマシン)でリズムを作っていて、フレッシュでカラフルがトレンドだった。
誰もが可能性に溢れ生き生きしていたという。

暫くして、ドラッグのせいで街が荒れ始める。
大人たちは金欲しさにドラッグに飛びついた。
朝、登校途中に誰かが撃たれるのをよく目にした。
毎晩のように銃声が鳴り響き、町は無法地帯と化していた。
NASは当時、生き残るためには早く一人前に成りたいと思っていた。

中学に進むが、学校は刑務所と同様だった。
NASの父親は息子たちを学校に入れる事が地獄送りと同じなんて、とてもショックだったようだ。
NASが学校について行けず、教師から生徒ではないと言われた事に対し、
「アメリカ人らしく働け、生き抜きたきゃ学校を辞めろ、応援するからやりたいことをやれ」と。
息子たちの背中を押している。
NASにはウィリーグラハムという親友がいたが、銃殺されている。
彼は陽気で、思考がNASに似ていた。
他の友人は皆、麻薬の売人だった。

1985年クイーンズ出身のMCシャンが「TheBridge」を発表。
団地の事を歌った曲でクイーンズがヒップホップの発祥地であるという表現を含んでいた。
そのことに対して、サウス・ブロンクス出身のKRSワンは「South Bronx」という曲で反論。
一方、MCシャンも「Kill That Noise」で間髪入れずに返すが、
KRSワンは「The Bridge Is Over」で更に応戦し、バトルは一旦終息する。
ヒップホップではこのようなやり取りをビーフ(ディス)という。

創造する事への情熱がどん底から俺を救ったんだ。
NASはそこから這い上がる。
1991年Main Sourceの「Live at the Barbeque」に参加し、ラップをしている。
あいつは誰だ。
「12の時、ジーザス吸って地獄行き」って周りが注目し始める。
この登場がきっかけとなり、レコード会社と契約している。
1994年「Illmatic」を発表。
彼の魂の叫びとも言える言葉は、人々の胸に突き刺さった。
その後、ミリオンを連発。一躍スターダムへのし上がる。
志半ばで亡くなった友たちへの感謝を忘れずに。
周りに流されず、自分を信じた。
NASは地元では英雄だ。彼を知らない者はいない。

[youtube=https://youtu.be/-aB6bfucM04]